気付けばもう、あの日から5ヶ月も経っていた。
自分の初恋を奪われ、そしていきなり終らせてしまったのだ。
今はもうアイツに逢うことは出来ないけれど…
多分この音は懐かしみとともにアイツの心に響いているだろう。
そう、たとえ世界が違っても…地上に届くはずだ。
まだ地上に居たころには吹奏楽部のサックスパートに所属していた。
そこで俺は恋をした。
二人とも愛していた。
なのに…なのになぜ俺は…一人死んでしまったんだ…
あの日…最後のステージが終わって帰りのバスから降りてすぐ…
いきなり血を吐いて倒れたんだっけ。
最後に見たのは…アイツの泣き顔だった…
気が付くと、そこには白い靄がかかっていた。まるで雲の上にいるようだ。
そして気が付くと、下には山が広がっていた。
解ってしまったが、信じたくない。
俺は…死んだのだ。アイツを残して…
見ると、俺の近くにはサックスが5本ほど転がっていた。
俺は確信した。
こいつらは俺の望んでいたサックスだと。
そして閃いた。
こいつらの音なら地上に届くはずと。
そのサックスを手に取り、チューニングをして吹き上げた。
届け!この響きと共に…
まだ吹ける!
多分あいつにも届いただろう…
あいつにむかってこの愛を俺は…響かせている…