再びベルマリン牢獄へと戻された五人は処刑の日を迎えた。
「これより教皇暗殺に加担した異端者五名の処刑を行う」
縄で拘束された五名が執行室に移された。
モゼフや他の異端諮問委員たちは鉄格子の向こうからこちらを見ていた。
グルルル...。
執行室の奥から不気味な唸り声が響いた。
まるで竜ような姿をした魔獣がこちらに気づきヨダレをポタポタと流していた。
いや、それは竜などと言う高貴な生き物ではない。
竜のようだが豚のような鼻をしており、ブクブクと太っている。
魔獣は餌に向かい真っ直ぐ突進してくる。
その時だった。カイエンが自らを縛っていた縄を力ずくで引きちぎった。
「ウォォォォ!」
カイエンは迫り来る魔獣に鋼鉄の拳で腹を打った。
「ギェェェェ!」
魔獣は苦しみ悶えている。
次にカイエンは壁に向かい一撃を放つと壁は崩れ、廊下への道ができた。
「ここは俺にまかせろ!」
カイエンが言った。
「ダメだ!カイエン一人じゃこのバケモノには勝てない!俺も残るぜ!」
ギリアムがカイエンに加勢しようとする。五人はこの一カ月間度重なる拷問でボロボロだった。
カイエンに勝ち目がないのは明らかだ。
「馬鹿野郎!剣も持ってないお前がいると足手まといなんだよ!無駄口叩いてねぇでさっさと逃げやがれ!」
「カイエン殿の言う通りだ。このままだと五人ともあのバケモノの餌だぞ」
カーレルがギリアムを諭した。
「でもそれじゃあカイエンが...」
ギリアムが呟く。
「早く行け!」
カイエンに急かされ四人は壁の穴から廊下へ出た。
「さぁて、老いてもこのカイエン=アルゴルン貴様のような醜いバケモノには負けんぞ!」
魔獣は再びカイエンに向かって突進してくる。
カイエンは渾身の一撃で魔獣を仕留めにかかる。
ズドォォォン!
魔獣は倒れたがカイエンもカギツメにより致命傷を負った。
モゼフや他の異端諮問委員たちは焦ってギリアムたちを追った。
「この鋼鉄の拳カイエンがこんな雑魚の手に掛かって死ぬとはな。これも神のご意志か...」
血がドクドクと流れ落ち意識が遠のいていく。
「ギリアム...。
強く生きろよ...」
最後にこう呟き鋼鉄の拳カイエン=アルゴルンはその生涯を閉じた。