私は、幼少期を親類のお寺で過ごし、武道を骨の髄まで叩き込まれながら育つと言う、一風変わった少年時代を送ってきました。
ここで、その少年時代の不思議な体験を綴らせて貰う事に致します。
「令! また喧嘩してきたのか」
言葉と共に、私の頭上に住職の鉄拳が降ってくる。
「だって!…アイツら弱い者イジメばっかして……」
言い募る私の言葉には耳も貸さず、住職はいつも通り荒縄で私を本堂の柱に括りつけ『飯は抜きだ』と怒鳴った後、足音高く去っていった。
「?またお葬式あったんだっけ」
すっかり慣れっこになっていた私は、朝の居合いの稽古まで寝てりゃ済むこと、と熟睡していた。
誰もいない筈の本堂がやけに賑やかな事に気付き、私は目を覚ましていた。
人の話し声、ペタペタと本堂の板敷きを歩く音、納骨堂から聞こえてくるカサッとお骨の崩れ落ちる音……
「あの人かな?」
私は、ボーッとおぼろに霞む人影がふらふらと彷徨い歩くのを見て、そう思っていたが、いつしか再び眠りの世界に入り込んでいた。
「このクソガキが!ちょっとは恐がってみぃ」
朝稽古の時、私の頭を軽く小突きながら住職が呆れた顔で笑っていた。
人は『死ねば終わり』じゃないんだなぁ、と思う少年時代の私でした。
終わり