甘いワナ?

夢月  2007-11-30投稿
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彼女とはデートも何回もした。

遊園地、映画館、動物園…いろいろなデートスポットに行った。

彼女はどこへ行くのも恥ずかしそうにしながらも、嬉しげな笑みを浮かべて付いてきてくれた。


彼女は話上手ではないけれども、聞き上手だった。

俺の話を熱心に聞き、軽い冗談を言えばクスっと笑ってくれる。

彼女はただ話を聞いているだけではなく、時折、的確な質問をしてきた。

彼女はとても理知的で、話し手を満足させた。


また、彼女はいつも俺といることを考えてくれていた。

放課後、俺が部活があって一緒に帰れないと言った時も彼女は

「私も用事があって遅くなるから一緒に帰ろう。」

と言って誘った。

“用事なんて彼女にないだろうに”

そう思いながらも、彼女の気持ちを思えば何も言えなかった。



クリスマスも間近に迫ったある日。


俺は部活が終わると、すぐに彼女のもとへ急いでいた。

彼女は図書室にいた。

窓際のイスに腰掛け、外を眺めている。

その様子は、夕日が彼女へ後光のように照らしていて美しく、言葉を忘れて彼女に見惚れてしまった。


“…はぁ”


ふいに、彼女の唇から溜め息が漏れたのが聞こえた。
そして、彼女の顔が悲しげな表情に彩られていることに気付く。

彼女はグランドにいるサッカー部の男子を見つめていた。

おそらく、俺がいるのに気付いていないのだろう。


「…弘人くんと別れたほうがいいのかな」


彼女が誰ともなく呟いた言葉に頭が真っ白になった。

ワカレル?ダレト?


彼女の言葉が理解できない。

仮に頭が理解しても、“心”が拒絶した。


ナゼ?ドウシテ?


俺はそのまま立っていることができなくて、その場を後にした。


俺の心は暗闇の嵐のように荒れ狂っていた。

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