彼女とはデートも何回もした。
遊園地、映画館、動物園…いろいろなデートスポットに行った。
彼女はどこへ行くのも恥ずかしそうにしながらも、嬉しげな笑みを浮かべて付いてきてくれた。
彼女は話上手ではないけれども、聞き上手だった。
俺の話を熱心に聞き、軽い冗談を言えばクスっと笑ってくれる。
彼女はただ話を聞いているだけではなく、時折、的確な質問をしてきた。
彼女はとても理知的で、話し手を満足させた。
また、彼女はいつも俺といることを考えてくれていた。
放課後、俺が部活があって一緒に帰れないと言った時も彼女は
「私も用事があって遅くなるから一緒に帰ろう。」
と言って誘った。
“用事なんて彼女にないだろうに”
そう思いながらも、彼女の気持ちを思えば何も言えなかった。
クリスマスも間近に迫ったある日。
俺は部活が終わると、すぐに彼女のもとへ急いでいた。
彼女は図書室にいた。
窓際のイスに腰掛け、外を眺めている。
その様子は、夕日が彼女へ後光のように照らしていて美しく、言葉を忘れて彼女に見惚れてしまった。
“…はぁ”
ふいに、彼女の唇から溜め息が漏れたのが聞こえた。
そして、彼女の顔が悲しげな表情に彩られていることに気付く。
彼女はグランドにいるサッカー部の男子を見つめていた。
おそらく、俺がいるのに気付いていないのだろう。
「…弘人くんと別れたほうがいいのかな」
彼女が誰ともなく呟いた言葉に頭が真っ白になった。
ワカレル?ダレト?
彼女の言葉が理解できない。
仮に頭が理解しても、“心”が拒絶した。
ナゼ?ドウシテ?
俺はそのまま立っていることができなくて、その場を後にした。
俺の心は暗闇の嵐のように荒れ狂っていた。