『そ、そうなんだ。覚えてないと思うけど、幼稚園一緒だったよ。』
『あ、そうなんだ…ごめん覚えてないなぁ』
そりゃそうだろうよ…誰が幼稚園で少し一緒だったくらいの人を覚えてるものか。
『ううん、普通はそうだよ。気にしないで』私はそういって仕事に戻った。その日一日、恥ずかしい気持ちと残念な気持ちと、上司へのムカつきでゲンナリしていた。そろそろ仕事を終えようかという頃、上司が近付いてきた。見えてないふりをしようとしたのに、私の前に来て
『これ○○さんがお前に渡しとってくれだって』
手渡されたのは折りたたまれた一枚のメモ用紙。そこには初恋の彼の名前と電話番号、そして『電話ください』というメッセージがあった。
パニクった。意味がわからず、状況が飲み込めず、頭が真っ白とはこういう事?でもとっさに思った。
(自分からかけるのは嫌だ。何か話したい事があるのなら向こうから連絡がくるだろう)
そう思い私の電話番号をメモして上司に渡してもらった。上司は自分が配達したその二枚の紙が何なのか、気になって仕方ないようだった。
その日の夜、わたしの携帯電話がなった。初恋の彼だった。少し携帯を眺めて通話ボタンを押した。