ぼんやりとした香りの布団にくるまりながら、
お気に入りの曲。
あの頃笑いながら、聞いていたあの曲。
今でも変わらずに美しいファルセットは響くのに、
あの頃共に笑い合った人はいない。
私には人間に重要な何かが足りない。
それが何か分からないまま一人になった。
思惑ばかりが絡み合い、
私は誰も誠実に感じる事が無かった。
あなたもそうだったの。
笑い合った時間。
大好きなこの曲。
煙草の煙とあの人の顔が忘却の空間に滲んで溶けて行く。
愛するの意味も理解できないままに、
ただあなたを忘れて行く時間が悲しいだなんて。
さよならよりも悲しいなんて。