WALL

かなた翼  2006-03-30投稿
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ついこの間、僕の部屋の壁に身に覚えのないシミができていた。それはどことなく人の顔みたいな感じに見えた。僕は壁の汚れなどは気にしないタチなので、あえてそれを消さずにいた。
今思えば消すべきだった。
なぜかって?それは今日その顔みたいなシミが僕に話しかけてきたからさ。
その時、僕はいつものように七時ぐらいに起きて部屋を出ようとしていた。
「おい、お前チョットは気にしろよ」
見知らぬ男の声に僕の眠気は吹っ飛んだ。
「誰だ!?」
「後ろだよ、後ろ」
…まさか。僕のいやな予感は見事的中した。シミがしゃべっている。
「やっと気付いたな。どんだけ無視すれば気がすむんだよお前は」
僕は言葉を失った。どう答えていいか分からずにその場に立ちつくした。
「おいおい大丈夫か?」
よく分からないが僕はシミに心配されているみたいだった。僕にしてみればシミなのにしゃべっている奴こそ大丈夫なのか怪しかった。
「まぁ無理もないか。初めは皆驚くもんだからな。俺は見ての通りシミだ。名前はまだねぇ。性別は男だ。これからここに住まわせてもらうぞ」
「シ、シミ?ここに住むってどうゆうことだよ、ってかシミってしゃべっていいもんなの?」
パニックに陥るのを必死に防ぎながら僕はやっとまともに話すことができた。
「おいお前シミだったら話しちゃいけねぇってのか?そりゃないぜ。この世界にはお前の他にも部屋の壁に話すシミがいる奴がゴロゴロしてんだ。まぁ何て言うか宝くじに当たった程度に思っといてくれや」
僕はそんな宝くじになど当たりたくはなかった。そしてなんて図々しいシミなんだと思った。
「君、名前ないとか言ってたけど…」
「あぁ、そうなんだよ。なんか良いやつ考えてくれないか?」
僕はいきなりの注文にドキマギしながらも出来る限り頑張って考えた。
「えーと、シミ太郎とか」「お前、なんだよそれ。語尾に適当に太郎つけただけじゃねぇかよ。それに無理してシミを入れようとするな」
どうやらシミは気に入らなかったらしい。つくづくわがままなシミだ。
その後もシミの名前会議は続き、その結果シミの名前はジミーになった。僕がやはりシミ的な要素を入れるべきだと言い、シミは外人みたいなスマートな名前がいいと言ったためだ。
僕は学校に行くことを思いだしてジミーに一言告げてから部屋を出た。
その日から僕とジミーの不思議な共同生活が始まった。
つづく



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