すると母は自分の胸を指して。
『今ココ痛くない?お母さんはスッゴク痛い。悲しくてスッゴク痛いよ。』
『ごめんなさい〜』
『嘘をつくとつかれたお母さんも痛いし、ついたチコも痛いの。全然イイ事ないんだよ。嘘をつくのは悪い事なのに…
嘘は悲しい気持ちをいっぱいチコの中に入れてきて、チクチクさして、ウソばっかり言う子になっちゃうの。悪い子になっちゃうんだよ!
ウソを言うたびにまた痛いんだよ』
と言いながら今度は私の胸を指差し、
『約束しよ!お母さんには何でも言う事!絶対ウソ付かない事!チコならデキルよね。
だから教えて。
バレエ辞めたい?』
私は泣いていたので声にはならなかったけど、精一杯首を横に振った。
なんで続けようと思ったのかはあまりよく覚えてないけど、私のレオタードを楽しそうに作る母…
なれないバレエを必死に踊る私を見て、嬉しそうに笑う母の笑顔を守る為、
私にはやめたいと言う勇気がなかっただけだったと思う。
でも、その時、首を横に振りながら見た、母の嬉しそうな顔だけは、私の大好きなあの笑顔だけは、今でもはっきりと覚えています。
その時はわからなかったけど、その笑顔には意味がありました。
それは、今でも私の誇りへと繋がる笑顔となった。
【嘘をつかない】
それが母との約束のハジマリでした。