次の日。
彼は、昨日より少し早めに駅に来た。
昨日、言いそびれた 御礼を言うためだった。
誰もいない改札を通り、三段しかない階段を上がり、歩道橋の横から向かいのホームを気にしながら歩いた。
いた。彼女だ。黒のセーラー服に水色のリボンをしている。
しばらくどうしようか迷っていたが、彼は緊張しながらも、向こう側にいる彼女に大声で話しかけた。
「昨日は…傘!サンキュ!」
突然でびっくりしたのか、一瞬 彼女の肩がすくむのがわかった。が、すぐに笑顔になり、
「どーいたしましてー!」
と、返事が返ってきた。
それが何故か彼には嬉しく感じた。
「ねぇ、その学ラン!N高の制服でしょ?!」
今度は彼女から話しかけてきた。
「え!?なんでわかんの?!!」
「だってココ!」
と、彼女は手首の辺りを指でトントンと突いてみせた。
「ココに白い線入ってるのN高だけじゃん!」
彼は自分の腕を見た。確かに白い線が一本入っている。入学して三ヶ月、初めて気が付いたきがした。
ガタンゴトン…プシュー
気が付くと、電車が彼と彼女の間にピッタリと止まっていた。
話しに夢中で、アナウンスが聞こえていなかったのだ。
また、彼女は電車の窓から手を振って去っていった。