プロローグ
――魔生町一丁目
現在時刻3:50
一組の男女が電柱の影に身を潜め、数メートル離れたところにいる一人の少年を観察している。
男は長い髪を後ろで縛っている、およそ20代後半くらいので、髪が短い女の方は男より一回りは若いように見える。
男はサングラスを掛け、黒のスーツ姿に黒のズボンという全身を黒一色にしている。そのためか、全く目立たない。
一方、女の服装も黒のTシャツに黒の短パンと、男の姿ほどではないが、男と同様、黒一色となっており、昼間のこの時間帯ならそれほど目立つ恰好ではない。
そして観察されている少年だが、女よりも若い15、あるいは16くらいに見える。
高校生と見て悪くないだろう。革の鞄をぶらぶらとさせながら歩いている。
上機嫌なのか、鼻歌混じりだ。髪の色は黒。
時は流れた。
――現在時刻4:00
少年は目的地である家の中へ入って行った。
と男は携帯電話を取り出し、電話を掛けた。数回のコール音の後相手が出た。
男は相手に異常はなかったと伝えた。
「行くぞ」と男は女に言い女は無言で後を追った。
――私はまだ知らなかった――彼の持つ力の大きさを