彼女に告げた。
僕の気持ちを全てぶつけた。
「僕は、小山内さんから預かったあの小箱。裏のメッセージを見たときから気づいていたんだ。今日みたいな究極の選択を迫られる日が来ると。鍵を使って中をみたんだ…母子手帳が入っていた。」
すると小山内が「何で言わなかったのよ?」
「いいから聞いてくれ。開けた日から予想はついていた。この日がくると分かっていた。悲しいかもしれないが…この子はあきらめてくれ。」
そう告げて、僕は黙って母子手帳を破った。
小山内は泣きながら激怒した。
「やめて…お願いだから。この子を生ませて…。」
「この子には罪はない、でも。お前が大切なんだ。お前が一番大切なんだ。だから…母子手帳じゃなくて、こっちにサインをしてくれ…。」
僕は、自分の欄だけを埋めた婚姻届を彼女に渡した。
彼女はさらに泣き崩れ、「ずるいよ…かっこつけちゃってさ…」
「この子の分まで、絶対に幸せになろうな。俺が全て責任もつからな。」
すると小山内は黙ってうなずき、「はい。あなたに全て任せます。」
薄暗い夕日の差し込む狭い部屋で、僕らは運命を恨みながらも、出会いを導いた運命に、不思議と感謝していたのかもしれない。