ロストメロディ

あいじ  2007-12-03投稿
閲覧数[522] 良い投票[0] 悪い投票[0]


刹那にしてみればそれは永遠に続く久遠のような時間だったのかも知れない。
しかし、現実にはルシフェルの矢が刹那の胸を貫いてからそんなに時間は流れていなかった。
「バカな…コイツ…まさか…!?」
ルシフェルの顔が引きつった。
刹那はその胸元を深紅に染めながらも、己の脚で立ちあがった。
有り得ないような光景である。
「ルシフェル…お前はどうやら彼を目覚めさせただけらしいな」
刹那の胸の矢が消滅し、その両腕に光の粒子が集結する。
その光は刃のような形をつくり、天へまっすぐ向かって伸びすすんでいく。
(振り下ろして)
刹那の頭に少女の声が響いた。
鋭い雄叫びとともにその光の剣は疾風のような速さで大地を粉砕し、ルシフェルが身をかわすより遥かに速く、その体を吹き飛ばした。


彩羽の額を冷や汗がつたう。
その瞳は刹那をまっすぐ捉えていた。
「まったく…ニューフェイスの誕生か。やり切れないね」
不意にルシフェルの声が響いた。ルシフェルは生きていた。しかしその左半身は剣の衝撃を物語るかのように凶々しく破壊されていた。
「まだやるつもりか?」
「ジョーダン!もう興ざめだよ…その坊やもお前もまだ手は出さない。面白そうだからね」
そう言い捨てるとルシフェルは残った翼をはためかせ虚空へと消えた。
「勝手な奴だ…」
ルシフェルが消えるのと同時に刹那を抱きかかえた天見と明日奈が彩羽の側に寄ってきた。
「明日奈…いくぞ。奴を追いかける」
「待て彩羽、刹那はやはり…」
「ああ、間違いない彼は『戦使』だ」
彩羽は再び昏倒している刹那を見つめた。
「彼が起きたら伝えてくれ…もし君が戦使として生きるなら、失われた歌を…人類が失った歌を決して無くすな、と」
天見は頷いた。
こうして夜はあけ、刹那の新しい旅路が始まった。

序章 終



投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 あいじ 」さんの小説

もっと見る

ファンタジーの新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ