二人の絆 3

大堂寺 倭  2007-12-04投稿
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 あと一ヶ月で女子部長とお別れ出来るまできた。あと一ヶ月だけ辛抱したらいいだけなんだ。そうしたら、尊敬出来ない人間を相手にすることもなくなるんだから。
 松風もわかっているのだろうか、女子部長にはニンジンがないと反応を示す事はなかった。それも、俺にとっては救いだった。

 俺と松風の間に入れる人間なんざいない、これだけが俺を部活に留めている杭である。

 とは言っても、この二ヶ月は精神を病むに十分な期間だった。
 電話で兄達の声を聞く度に涙は溢れるばかりで、なんとか泣いていないふりをしていたけれど、あの兄達には見破られていたような気がする。

 そんな毎日に耐え続け、女子部長の引退日が決まった。その報せを受けた先輩と俺は、ハイタッチまでして喜ぶくらいだった。その様子をにこやかに眺め女子の先輩。
 また、あの時みたいに楽しく練習しよう、遅れた分を取り戻そう、三人でそう誓ったばかりなのに。


 知らされたのは絶望でしかなかった。


 −松風、売られることになったから−


 女子部長達、四年の引退日のたった一週間後だという。
 冗談、でしょう? なんの為にここまで耐えてきたんだ。

 どうしても納得いかない俺は、監督と話がしたいと訴えたが、そんな願いは聞き入れられることはなく、決定はくつがえらずに松風は売られることが正式に決定した。結局、俺は大事な場所で何も出来ないまま終わってしまうしかない。


 悔しくて、歯痒い思いだった。


 松風は今放牧中で、一人で遊ぶ事に飽きれば様子をみている俺達に近寄ってくるし、俺が中に入って歩けばその後ろを着いて来る。
 軽く走れば、松風も走って追いかけてきては、俺に頭をこすりつけて甘えてもくるんだ。


 もう、この日常は消えてなくなる。

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