それは…私が、うんと子供の頃。
小さな、恋をした。
お父さんに、小さな心の、小さな恋。
誰でも一度は、幼い頃夢は「お父さんのお嫁さん!」て言った事っないかな?
私はお母さんが居なかったから、なおさら。
お母さんは嫌い。とってもいい加減な人だったから。
最初は私を引き取って、お金はお父さんから貰ってた。
私には『何もしてくれない人』なんて嘘ついて…よく気まぐれに怒られたり、放って置かれた。
それでも保母さんなんだから、世の中不思議って思ってた…好きな人が出来たら私を簡単にぽいって捨てた。
ある日お父さんが迎えに来てくれた。嬉しかった。
この無意味な世界から救い出してくれる人。うっすら覚えてるそのままの、大好きな…お父さん。
お母さんとの別れは、あっさりした物だった。覚えてる。あの人のすっきりした顔。
まるで、要らない物がようやく無くなるって顔。
子供は敏感。気付か無いはずが無い。
だから私は、待ち遠しかったのだろう。
お父さんが迎えに来てくれるその日が。
幼い私は誰かに聞いてる「4歳までは、あと何日?あと何回寝たら4歳なの?」…変な記憶。でもワクワクしてる。
それは、お父さんが迎えに来てくれる日。聞いてる相手はお母さん。
嬉しそうに、聞く度々に何日か教えてくれた。
あの、を面倒な『物』を見る目は『その日』が近くなるにつれて輝いて…私を見る目は、日に日に空気を見る目になってった。
とうとう…やっと4歳になった日に、お父さんが迎えに来てくれた。私の誕生日プレゼント。
お父さんは、優しかった。記憶通りのお父さん。
私を見ない、興味の無いお母さんから救い出してくれる人。私より好きな人を選んで、簡単に私を捨てたお母さん。
『後、×日でお父さんがあんたを迎えに来るよ』って小さな子供に嬉しそうに、毎日話してた人。
それは子供を手放して、新婚気分を味わうためへのカウントダウン。