僕には…付き合って一ヶ月になる『彼女』がいる。ー…でも、その彼女は…少し変わってる。
初めて見た時は、“付いていけない…。”それが、第一印象だったんだ…。でも…次に逢った時は…とても…儚くて今にも消えそうに感じた…。
「こらっ！なぁに、ボケッとしてるのよ？」
煩わしくない音量でジャズが流れている喫茶店に、ボク達は居た。いわゆるデート…。彼女は、むすぅ〜とした表情で僕の顔を覗き込んできた。
「…ごめん。ちょっと考え事してた。」
僕が、肩を竦めて軽く苦笑いをすると、彼女はテーブルの上に置かれているアイスコーヒーを手に取り、ストローに綺麗な口をつけて、じぃ〜っと僕の顔を見ている。
「どぉーせ、ボクの今日の服装が気に入らない〜とか、思ってたんでしょ？」
ー…そう、僕の彼女の少し変わってるトコロ…それは、自分の事を“ボク”と呼ぶトコロだ。
「ち、違うよ…あ…でも…ちょっとソレも思ったけど…。」
「やっぱり！」
飲みかけのアイスコーヒーをテーブルに置くと、身を乗り出して僕の顔をギロリと睨んだ。実は、昨日の昼間、学校の食堂で、服装の話題が出たのだ。彼女は、顔こそ可愛らしい顔立ちをしているので、僕は“可愛い系の服”を希望したのだが…彼女は軽くその提案をあしらったのだった。彼女自身、そういう服は好みじゃないらしい。どちらかと言えば、ボーイッシュな服装が好きみたいだ。今日の服装も、Ｔシャツにパーカー…ジーンズにスニーカーと…男の子みたいな格好をしている。
「でも、今考えてたのは…君と初めて逢った時の事だよ。」
僕は、紅茶の注がれているティーカップを口に持っていきながら言った。彼女は、キョトン。とした顔をして椅子の背も垂れに背をあてた。ズズッと少し冷めてしまった紅茶をすすりながら僕は彼女に問う。
「…覚えてる？初めて逢った時の事。」
すると彼女は、細くて強く握ったら折れてしまうんじゃないかと思わせる指で、漆黒の長い髪を悪戯にいじりながら、んー…っと考え込んでいた。彼女の癖なのだろう。考え事をする時は、いつもこの仕草をする。見ていて、何故か落ち着く…その仕草をずっと見ていた僕に、気付いたのか彼女は、パッと髪をいじるのを止めてしまった。
「…忘れた。」
素っ気無くそう言い放つと彼女は微笑んだ。
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