あの日、あなたは「どうしてそんなに被害者ぶるの?」と言った。
電話の裏側で、少し怒ったように。
私はなにも答えられなくて、黙りこんだ。
被害者ぶってるわけじゃない。ただ、私は、どうしてあの時あなたが私を抱いたのかが知りたかっただけなのに。
恋人でもない私をどうして抱いたのかが知りたかっただけなのに。
だって、あの時私の服を脱がしたのはあなただったじゃない。
嘘でもよかったの、別に。
嘘でもごめんねって言ってくれればよかったのに。
そうしたら私は被害者ぶらなくてもすんだ。
あなただって加害者ぶらなくても。
電話の裏側のあなたを、少しだけ憎みながら私は言った。
「そうだよね、ごめん」
あの時、私は被害者のはずではなかったのに。