水溜まりに手をふる男

ポロンチョ牡丹  2007-12-05投稿
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僕は今、水溜まりに向かって…手をふっています。

人生どこで何が起こるかわかったもんじゃありません。

たったの数秒で、気力、意識、人生観さえも変わってしまうことだって、この世には、起こりうるのだと…

あの夜…気づかされたんです。

"…あの夜"

煙草を買いに外に出てみると、うっすーらと雲の陰から綺麗な月が顔を出していました。

雲の動きが、冬のアスファルトに写るくらいの、明るい明るい夜でした。
空にはシリウスが、月の光に負けまいと白くギラギラ輝いています。

電灯もない路地を右に曲がり、空を見上げながら歩いていると。

「あぶないよ……。」

「あぶないよ……。」

と薄気味悪い声がして、立ち止まりました。

丁度、雲の影が僕の真上を横切ろうとした時です。

暗い暗い路地の角から、ふっ…と月明かりに照らされて、一人の婆ちゃんが現れたんです。

「足下を…、見てみな……。…。」

突然現れた婆ちゃんに驚いた僕は、硬直したまま怖々足下へ視線をやりました。

そこには、丁度人がスッポリ入る程の大きさをした……、

水溜まりがあったんです。

(な、なぁんだ、、水溜まりか?。。)

水溜まりにはまるのを、止めてくれたのだとホッとしました。

(でも何でこんな所に水溜まりが??)

ここのとこずっと天気もよかったし、雨も降っていません。

(まさか…この婆ちゃんのオシッコ???!

で、でなきゃこんな所に水溜まりなんてできるわけがない?…。。)

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