暫く沈黙が流れた。私のあらげた声だけが辺りに反響し、看護士の微騒音も外の喧騒も、刹那、静閑したように思われた。
医者は驚いたように目を丸くし、私から視線を逸らすことを忘れていた。
すると、その静寂を切り裂くかのように慌てて看護士が奥のカーテンから入ってきた。
「どうされました？」
誰に尋ねてるのかわからない曖昧な投げかけは人間の耳だけでなく、壁にまで浸透していく。
真剣な顔貌の看護士は、訝しげに私を一瞥するとすぐさま医者に目を移し、さっきより落ち着いた語気でさっきと同じことを言った。
「なんでもないですよ。それより病室の空きはありますか？」
ちょっと調べてきます、と看護士が言うとそのまま出ていった。
その後、医者は私を目の前に、何も言わずひたすらペンを走らすと、このあとのことを簡単に説明し、私を待合室へと戻らせた。
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