再び長椅子の冷たさが伝わってくる。朦朧と聞いていた医者の話は、霧がかかったように白く薄れて頭に漂っているだけだった。
冷徹な長椅子はじりじりと私の感情を弄んでいる。
どのくらい待っただろう。昼どきのようで、職員は売店で買い物を済ませている。一人がふらふら動きだすと、その数は疎らだが確実に増えていくのだ。
私はその奇妙な人間の行動をぼんやり眺めていた。眺めながら、時間がきたら食べるという習慣に疑問をもち、家畜のようだなと憐れんだ。
そしてまた一人。かと思いきや、その看護士は私の前で止まると、では着いてきて下さい、と私を促した。
私は促されるままに着いていった。