着いた先は、とある一室だった。病室をちょっと入ると看護士は振り返った。
「今日から入院して貰いますね」
私はその一言に愕然とし、返す言葉のひとつも探せられず開いた口が塞がらなかった。
看護士が出ていくと次第に正気を取り戻していく。そしてそれと同時に腹の底から沸々と苛立たしさが沸き上がってきたのだ。
−私はただ、私に纏わり付くものから開放されたかっただけなのに、それを気違いの狂信者のように縛り付け、隔離しやがって!−
どうこうしようにも、その苛立ちを抑制することができず、なるがままに勢いは増していった。
皮肉にも私の拳からは出血し、ベージュの壁には赤い斑点ができていた。
痛みは感じない。痛覚を制した狂暴な私は、この憤るほどの怨嗟を力ずくで打破しようとしていた。