サラリーマンだった私。毎日上司に罵倒され、それでも上からの命令は絶対だった。
間違ったことにも「はい」と首肯し、意見主張など微塵も通らない。ペンテルのカラス。
まるで軍事主義の名残を残した社会。権力の前で私の精神は参ってしまっていた。
そして逃げ込んだのが此処だった。
しかし、ぶざまなすぎる今の状況。屈辱でしかない。
強行手段を取れば益々事態は悪化するだろう。なにもできない自分が惨めであった。
薄暗くなってきた外の模様に淡い赤が色付く。窓から注ぎこむ同じ模様に切なさが感じられ、挫折感に限りなく近い妥協を虚しく誓った。
何処へ行っても纏わり付くものからは逃れられないのだ。
−完−