『おばさん、あいつホント馬鹿な奴だょ』
突然の若き訃報に驚きを隠せない参列者を見ながら、静かに言った。
『ホント、馬鹿みたいよね。子供を助けて自分が死んじゃうなんて』
俺の最愛のダチである山本一真は、雲一つないある秋晴れの日に交通事故にあい、その3日後の夜遅くに逝った。
ボールを追いかけ道路に出た小さな男の子にトラックが迫っていた。
そこに一真が走っていって子供を突き飛ばした為に自分がひかれてしまったのだ。
いつも、バカな事を言っては、周りを笑わしていた。
勉強はできる方ではなかった。
しかし何事にも一生懸命で、そして何より正義の塊の様ないぃ奴だった。
『おばさん、あいつね、救急車ん中で、相当キツィのに、俺の顔見て、何て言ったと思う?』
『あいつ…、苦しそうな顔して、俺に微笑んで、(こらこら、死にかけの人間見る様な目で見るな、俺は悪いけんまだ死なん)って、声振り絞ってそう言ったんです。』
『そう、』
おばさんは目に大粒の涙をためていた
10分位して救急車は病院につき、一真はすぐに集中治療室に運ばれた
それから何時間かし、一真は出てきた
既に意識はなく、医者も、今夜が峠だが、その後も回復は絶望的と言い残し、俺たちの元をさった
俺は学校を休み、ずっと一真と一緒にいた
一真に色々話しかけたのに、返事一つ返さない
だからつい、いらっとして言ってしまった
『お前、そんなに俺の話がつまんねぇかょ、うんとかすんとか言えよ』
叫び終わった後の静けさが妙に耳に染み付き嫌だった
そして3日後の夜、容態が急変し、そのまま心臓は止まり再び鼓動を打つ事はなかった
《まだ死なん》
嘘つき。
嘘などついたことがなかった一真がついた最初で最後の悲しすぎる嘘だった