暫く僕達は、見つめ合って…そして同時に吹き出した。
「…嘘つき。」
僕が、ボソッと呟くと彼女は、かぁっと頬を紅く染めながら残りのアイスコーヒーを飲んだ。その“照れ隠し”みたいな行動が、可笑しくて…でも可愛くて、僕はまた、軽く微笑んだ。
「忘れた。…なんて嘘だろ?あんなに劇的だったのに」
僕が、意地悪く笑いながら、紅茶を一口…口に含む。すると彼女は、僕を上目遣いで見ながら小声で
「…アレは…“劇的”って…言うのか…?」
疑問系で問い掛けてきた。僕は、少しズリ下がった眼鏡を、クイッと中指で直すと彼女の顔を見つめた。
「僕的には…ね。」
彼女との出逢い…それは、僕が今まで経験した事の無い出逢い方だった。
一ヶ月前…
僕は、毎朝の散歩を習慣としていた。友人には“爺さん臭い”と笑われたが、朝早くの日差しが、僕には心地よかったから…。“彼女”と出逢った日も例外では無い。
いつもの様に朝の散歩をしていると、風も吹かないのに一つの街路樹の樹から、ハラリハラリと葉が舞い降りてきた。僕が、不思議に思い…ふと葉が落ちてくる樹の方を見上げると…そこに居たのは、一人の少女…。木の枝に座って、何処か…判らない方を…見つめている。僕は思わず歩く足を止め、その少女を凝視してしまった。
「…」
…ん?何か…している…?と思った矢先…空(正確には少女が座ってる枝の上)から“通常有り得ないモノ”が落ちてきた……。何が落ちてきたかというと…
「あっ!!ボクのタコさんウィンナーがぁぁ!!」
少女の叫びと共に落ちてきたモノ…それは…お弁当等には定番の“おかず”タコ形のウィンナー。
「………え?」
僕が思わず口を開く。その声に気付いたのか、木の枝にいる少女は、呆然としている僕を見下ろしてきた。…綺麗な瞳だ。
僕は、少女の瞳に吸い込まれるかの様に見とれていると、木の枝にいる少女が口を開く。
「受け止めて。」
突拍子に、そう言うと少女は木の枝から僕の方へ飛び降りる準備をしている。
「ちょっ…危ないよ!」
僕は、そう言いながらも無意識に両手を差し出して“受け止める”準備をしてしまう。
「だからよ?キミが、ちゃんとボクを受け止めれば、問題無し!」
否!有りまくりだから!!と言おうとした瞬間…