「別にこだわってるわけじゃねーよ。上には上がいることも分かってる。ただ原田だけは許せねーんだよ、アイツにはぜってー負けたくねー」
高橋はさらに怒り口調だ。
俺は鍛えた。腕立て伏せ、鉄アレイ、腕の力になることなら何でもやった。ジャージを着ているせいでみんなには分からないがすこしだけど筋肉もついてきた。
帰りのホームルーム前にクラスメートの田村が言った。
「この前の続き見せてくれよ、みんなも見たいよな」「見たい、見たい」
教室はまるで格闘技の世界タイトル戦さながらの空気になっていた。
「ああ、俺も勝負つけたいと思ってたぜ」
高橋は完全に戦闘モードだ。
「じゃあ行くぜ、レディー、ゴー!」
レフリーをかってでた田村の声が響いた。
「チキショー!」
高橋の悲痛な叫びは校舎全部に聞こえる勢いだった。俺の胸が熱くなった。次の瞬間、無意識に叫んでいた。
「原田クン、俺と勝負してくれないか!」
教室の空気が止まった。
「お前、何言ってんの?」田村が言った。
「いいよ、やろう」
原田が受け入れた。
結果は惨敗。
「だから言ったろ、お前も高橋もまだまだ甘いな、原田に勝てるわけないだろ」田村が半笑いで言った。