「このたびは…」
亡くなられた方を背中に、奥さんに挨拶をした。
「本日、主人が急用のためお別れできず、大変残念がっておりました。」
私って、いい奥さんできてるじゃん
自画自賛しながら、決まったセリフを口にした。
「家族のために尽くしてくれた主人でした」
奥さんは、涙声で喪主挨拶をしていた。
お葬式もおわり、会場をあとにしようとした時、一人の若い女性と目があった。
声にならないようで、崩れそうに泣いていた。
「どうかされましたか?」
見かねて声をかけた。
「…」
声にならない嗚咽をあげていた
人徳ある人だったんだなぁ…こんなに泣いてもらえるなんて。
その女性を近くの喫茶店までつれていき、落ち着くようにうながした。
「あ、ありがとうございました」
やっと女性が口を開いた。