ポストマン 五

COCORO  2007-12-07投稿
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青年は震えが止まらない。
そして、次は自分ではないかという恐怖に苛まれた。

その日の深夜だった。
青年が寝付けないでいると(トントン、トントン)ドアをノックする音が…まさかとドアに近づくと…そのまさかだった。

「手紙 …手紙…。」

女性の、聞き覚えのある優しい声がした。
しかし今の青年に、思いやる余裕は無かった。

「ハガキは渡せない…もう、あなたには会えません…成仏してください…
頼みます…頼みます!」

その場にうずくまり、青年は手を併せ続けた。
すると、いつの間にか女性は消えていた。
それは何日も続き、青年の精神が限界にきていたある日のこと、青年は手紙とハガキを全部燃やしてしまった。
すると、いつもの時間になっても女性は現れなかった。

「フッ…フハハハハ…最初からこうしてればよかったんだ。」

青年は安心と疲れから、
すぐに眠りについた。
しかし、その明け方のことだった。
青年は何やら鼻につく、肉の腐ったような臭いで目が覚めた。
それは、枕元で青年を覗き込む女性であった。
顔の半分の肉が腐れ落ち、ドロドロの肉汁の様な物が、目を合わせた青年の頬にポタポタと滴っていた。

「うっ…うう」

あまりの恐怖に、青年から声にならない声が漏れた。
すると女性は言った。

「手紙…手紙読んだなああああぁぁ〜。」

ゴクン…。
安岡は息を飲んだ。

青年は真剣に聞く安岡を見つめる。

「ぷっ…ハハハハ…信じました?」

「エ?あ−!やられた〜!信じた…めちゃくちゃ信じた。」

「すみません。」

「いやぁ…おもしろかったよ。」

「どうです…他で飲みなおしませんか。」

「いいね…行こう。」

それを眺めていた中年の客が、マスターに尋ねた。

「今の客、一人でしゃべってたけど…酔い過ぎじゃあないの。」

マスターは落ち着いた口調で答えた。

「この街じゃ珍しい事ではありませんよ…あの方も 、連れていかれなければよいのですが。」

「えっ…それって。」

安岡は青年の数歩先をチドリ足で歩き、ご機嫌だった。

「まだ着かないのかい。」

「まあ、そう焦らずに。」

安岡は気付かなかった。
どす黒い顔で、不気味にほくそ笑む青年に…。完



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