たまに…自分の中身が《別れる》感覚がある。
こういうの、何て言うんだろう?
自分の中に『もう一人の自分』が 居る感じ。
まるで、テレビ越しに周りを見てるような…意識が《別れる》感じがする。
その時『僕』の中に『僕』が生まれる。
いつからか『僕』と『僕』は、それぞれの【個】を持つようになった。
それは…生きるために『僕』が生んだ、もう一人。
苦しみや悲しみを分けて受け止めるために。こんな自分だから、人を好きになる事も無いと思っていた。『自分達』が嫌いだから…
しかし、ある日それは打ち砕かれた。
使い古された言葉だが《一目惚れ》をしたから。
ゲームにもたいして興味は無い。するのは携帯のミニゲーム位だ。もっぱら漫画や小説…簡単に言うと、活字中毒状態ってやつ。
その人と出会ったのは、これまたベタに本屋。
中性的でメガネが似合うストイックな男の子…あんな風になれたらなぁ…と思ったら胸があった。しかもスカートを穿いている。何で見間違えるかな〜自分。
なぜか動悸が止まら無い。ふらふらと、後を付いて行ってしまう…真剣に本を探し、めくるその長い指に、文字を追うメガネに付きそうな長いまつ毛に覆われた日本人にしても、真っ黒な少し切れ長の瞳に目を奪われる。
どうやら、その人も本が好きみたいだ。重そうな本を既に片手の肘の間に乗せている。
そこらへんで、並べられた本の上に買う予定らしき本を他人の迷惑なんて、お構い無しに置いてる人達とは大違い。重そうだ…持ってあげたい!
あ・ジロジロ見てるのバレたかな?不思議そうな顔で、左右を見回している。
急いで視線をそらす。危ない危ない!変な奴って思われたら最悪…立ち直れ無い。
って名前さえ知らない、会ったばかりのあの人にそんな事思うなんて超重症だな。
20歳の僕より少し歳上位の、よく見るとすっぴんってやつだ。
唇はふっくらと赤く、肌は白く、爪は自然な桜色。まつ毛も長いから全然気付か無かった。
そこも何だか好感が持てた。この頃の女の子は凄い化粧に凄い爪で、たまに食べられるんじゃないかって気分になる。
って…こんなに観察して十分ヤバい奴だよな…僕。でも見るのを止められ無い。どうしたものか…。