そこから、どうやってこのコンビニに辿り着いたかは、分からない。
頭の中は、夢と現実とがゴチャゴチャになり、パンクしそうだった。
自分は、殺してないと自分自身に証明する為に、この名も知らない男に話したのだ。
男は、黙って一通り話を聞くと、伸びをしながら、
「だったら、俺に付いてこい。俺は、この近所ので、ライブハウスとスナック経営してんだ。ほら!」
そう言うと男は、財布から名刺を取出すと、亮に手渡した。
《Master・マイト》
「呼び方は、マスターでもマイトでもどっちでもいいよ。
仲間は皆、俺をバカって呼んでっから(笑)」
「アタシは、アキって名前だけどよくリョウって呼ばれる。まぁ、好きに呼んでくれて構わないよ。」
「じゃぁ、雅《ミヤビ》。
仲間は、皆俺の付けた名前で生活してんだ。本名は俺しか知らない。だって、知る必要なんかねーだろ?」
「何で必要ねーんだ?」
「そこには、世の中の流れなんか関係ナシに、時間が流れてる。皆、世の中に深く傷つけられて、死のうとしてた奴ばっかだ。
それを俺が、捨て猫拾って家で、飼うみたいに、拾って来て一緒に住んでる。」
マイトは、腕組みをしながら言った。
「名前、関係ないじゃん」亮は、呆れた様な口調で言った。
「猫に名前付けるべ!それと一緒。名無しの猫が、名前付いて、可愛がられる様に、あいつ等も、古い名前捨てて、新しい名前で過去と決別する。生まれ変わるんだよ。」
マイトは、誇らしげに言い放った。
「さっ、雅帰るか。」
マイトは、亮の言葉を待たずに、亮の荷物を手にし立ち上がった。
もうすっかり、マイトの中では、雅らしい……。
雅は、他に行く所がないので、付いて行く事にした。
暫らく歩くと、道の両脇に小さな店やビルが立ち並ぶ商店街に出た。
途中、3人の街の人らしき新聞配達の人と牛乳配達にすれ違ったが、マイトは親しげに挨拶を交わし、進んで言った。