第?章
母ノオモイ
母の願いは
《健康で自分が信じた道を進み、その先には名前に負けない幸せがある事。遠回りしても、幸せだと思える瞬間に気付き、人より多く笑える日を過ごせます様に…》
とよく言っていた。
意味なんてよくわからないし、どうしたら幸せになれるのかなんて??母と二人で考えたりもしたけど…
私にはそんな時間より早く友達と遊びたかった。
兄は私より四歳年上という事もあり、何でも出来た!私には一時間かかる事を10分で終わる。
私の中の負けず嫌いの性格と両親の期待や視線を持って行かれてる気がして、兄には全ての事で張り合った。でもどれだけ頑張っても兄には勝てず、私のダメさは、余計に際だった。
近所の人は何でも器用にこなす兄を褒め…私には、
『チコちゃんはあんなお兄ちゃんがいていいね〜』
と言う。
ドコに行っても、誰に会っても、お兄が出て来る。
その度に私は卑屈になる。
でも、幼稚園だけは…先生だけは違った。
バレエはちゃんと踊ってるつもりでも、毎回先生には怒られるし、何より幼稚園は友達と沢山遊んでも怒られない!
だから私は幼稚園が大好きだった。
兄ではなくて、《サッチャン》と呼んでくれる、その時の…心が閉ざされた私には唯一の居場所だった。
だから毎日休まず通った。
特に先生は、いつも一緒に遊んでくれるし、何より幼稚園を休むと私以外の園児に先生を取られちゃう気がして、絶対に休まなかった。