奈央と出会えたから。?

麻呂  2007-12-09投稿
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ルックスは悪くはないと思っていた。
自分で言うのもなんだが、高校時代は妻夫木聡に似てると言われた事もある。
モテモテだったと言えば嘘になるが、付き合っていた彼女もいた。しかし今の俺は決してイケメンとは言えなかった。
ヨレヨレのジーンズにセーター。
足には履き古したスニーカー。
上着は薄汚れたダウンジャケットを羽織っていた。
だせーなーー。
もし今の俺があの子に声掛けたらどうなるだろうかーー。
勿論、客に失礼な態度はとるまいーー。しかしデートに誘う事はまず無理だろう‥。
そんな事を考えながら2本目のタバコに火を点けた。

『あれ?!もしかして松田だろ?!』
振り返る俺のすぐ横で、どこかで聞き覚えのある声がした。『萩原?!』
声の主は中学時代の悪友、萩原裕太だった。
『松田、お前どうしたのよ?中学時代の智也クンはどこへ行っちゃったのやら?』
『俺、そんなに変わったか?』
『変わったなんてもんじゃないよ!!顔色悪いぜ?!ちゃんと飯食ってるのかよ?』
『ハハハ‥。ちょっと不摂生中ってとこかな。』
『お前、今何してんのよ?!』
『ネットカフェ難民。』
『ネットカフェ難民‥って?!マジ?!おまっ‥もう俺らも若くはないんだぜ?!』
10年ぶりの再会だった。
萩原裕太は俺の一番の悪友で、授業フケたり、放課後ツルんで街を彷徨いたりーー。まぁ、青春時代に誰もが経験する、かわいい悪さをする時は、いつもコイツと一緒だった。
『萩原、お前こそ今何してんの?』
『俺?いわゆるサラリーマンてやつ?お前も俺もBOOWY好きだったよな。ヘッ、あの頃は、レールの上に引かれた人生なんてまっぴらだぜって思ってたけどよ、俺らも年とったよな。』
『ハハハ‥。そっか。そうだよな‥。』萩原は去年結婚して一児の父親だと言う。自分とのあまりにも違いすぎる境遇に、正直恥ずかしかった。
『ま、今度一緒に飲もうや。』
そう言って萩原と別れ、俺はまた店内を巡回していた。

『ですから機械は正常に作動しています。』
どこからか、さっきの石原さとみ似の店員の声が聞こえてきた。
俺はその声の元へと目を向けた。



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