戦国異聞〜鬼と竜〜5

オケピ  2007-12-09投稿
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『じじい!客だ!茶を出しな!』

正宗は、何食わぬ顔で、庫理に上がり、叫んだ。

『やかましいのう。また戻ってきおったか、このうつけものは。いい加減、正しい言葉遣いを覚えんかい』

でてきたのは老坊主。
『うるせえ。この、くたばり損いが。奥の部屋、使うぜ』

『駄目と言うだけ、無駄じゃろうが』

老坊主はそう言うと、歳三に眼を止めた。

『ほお、そなたもなかなかのうつけものの様じゃ。だが、良い眼をしておる。名をなんと言う?』

歳三は、この老坊主の眼を見た。一見、穏やかそうに見えるが、全てを見透かすかの様な眼だ。と思った。

『土方歳三と申します』
歳三は軽く会釈した

『これはこれは。どこぞの馬鹿者と違って、礼儀はわきまえとる様じゃ。』

『あなたは?』

『おお、すまんすまん。わしの名は諾斎じゃ。まあ、覚えておってもなあんの得もないがのう』

『もういいだろう、じじい。こっちは忙しいんだよ。おい、早くこっちに来な。』

最後は歳三に向けた言葉である。

歳三は諾斎の脇をすり抜けた。

『お前さん、この世界の人間ではないな?』

すれ違い様に諾斎の囁きが聞こえた。





歳三と正宗は、囲炉裏を挟んで座っている。

『さて、何から話そうか』

正宗は誰ともなく呟いた。

『俺から話そう。信じるか信じないかはお前の自由だ』

歳三を知る者がいたら、驚いたであろう。それほど、この男から話し始めるのは珍しい。

歳三は、自分の事、自分の知っている歴史等、全て正宗に話した。
自分でも驚いていた。伊達正宗と言う男の持っている魅力がそうさせたのか。

『これで全部だ。あとはお前が好きに考えればいい』

『面白え!そんな世界があるとはな!しかし、まさか弱虫の家安が天下を獲るとはな。驚いたぜ。マジで面白えぜ。俺はあんたを信じるぜ。あんたの剣には魂がこもってた。ただのバッタもんには出せねえ真直ぐな剣気だった。そんな男が嘘をつく筈がねえ。』

歳三の予想とは裏腹に、正宗はあっけなかった。歳三は、正宗という男が何となく気に入った。
『じゃあ次は俺様の番だな。』



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