僕と僕で一人分…3

悠月亜夜  2007-12-09投稿
閲覧数[318] 良い投票[0] 悪い投票[0]

とっさに「あ・あの、僕は時間あるんで大丈夫です!重そうだし、先にどうぞ!」と少し裏返った、緊張バレバレの声でその人に返す。
もう少し、気のきいたセリフは無かったのか?…僕。

「そうですか?」と申し訳なさそうな顔で、又前を向く。

僕が自分を『僕』って呼ぶのは、親のスパルタ教育の産物ってやつだ。学校も幼稚園から一流で作法教室なんてのにも通わされた。
でも、親は勉強以外に僕に興味が無いらしく父は仕事に・母は習い事や、友達やら親の集まりとか言って誰かしらの家に毎日のように出掛けている。
晩御飯は一人でレンジでチンって感じ。
後は勉強か、読者。
あまりにつまらない生活へ少しでも刺激にと社会勉強名目のバイトと、罪悪感からなのか何なのか…多めのこずかいでお金にはたいして困らない。部屋に入っても来ないから、本は好きなものが読める。
顔は必ず誰が見ても母親に似ているという女顔で、体も筋肉が付き難い。
女の子からは『ジャニ系』とか言われてるけど、そもそも『ジャニ系』の意味が解らない…ジャニ?
テレビはもっぱらニュースしか見ないけど、そんな言葉は聞いた事が無い。

自分が女顔だからストイックで、中性的なその人に目を奪われたのかもしれない。

その人にレジの順番が来た。
『ああ…ここでさよならか〜…せめて名前だけでも知りたいけど無理だよな〜いきなり名前なんか聞けないし』なんて思ってたら、その人は「あの・電話で本店から本の取り寄せを頼んだ、せきやのぞみですが…」と店員に話しかける。
まるで心の中が読まれてるんじゃないかって位のタイミングでその人…『のぞみさん』の名前が分かった。
店員が取り寄せ用紙にくるまれた本を「間違いありませんか?」と、のぞみさんに見せる。
ちらっと見えた名前の漢字。へぇ…『関谷 希』って書くんだ。
名前も何だか格好良い感じだ。

希さんは会計を済ませ行ってしまう。
と思ったら、又本のコーナーに…少しほっとした。まだ彼女に話し掛けられるチャンスがあるから。
もう少しでも、希さんと居たい!追いかけてちょっとでも話し掛けたい!と思っていた僕には好都合だ。
何て話しかけよう…あまり女の子に興味を持った事が無いから、どうやって話すきっかけを作れば…話し掛ければいいか解らない!
どうしよう…

i-mobile
i-mobile

投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 悠月亜夜 」さんの小説

もっと見る

恋愛の新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ