水溜まりに手をふる男(第6章)

ポロンチョ牡丹  2007-12-10投稿
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婆ちゃんは無言のままです…。

(一体どこを歩いているんだろう?。)

だんだん不安に思い始めると、ずっと無言だったはずの婆ちゃんが、重い腰でも上げたように口を開きました。

「肩に、つかまんな…」

婆ちゃんの肩に手を触れると、なんと面白いことに、今の今までただの白っぽい霧に見えていたものが、
急に明るく、色とりどりに光を放ち始めたのです。

体も不思議とかる〜くなります。

階段を上り下りする時に、もう一段あると思っていたらなかった時のような錯覚に陥りました。

(だけど、確かに歩いているような…歩いていないような…?。)

妙な心地よさです…。

またもや、非現実的な世界を体感してしまった僕は。
もはやこの体験が夢でも現実でも、どちらでもよく思えてきて…。

(今この瞬間を味わいつくさなきゃもったいない?
夢ならまだ覚めないでほしい。)

と、…そう望んだんです。

どこを歩いているのかは、わかりませんが…。
この婆ちゃんは、迷うことなく、ただゆっくりゆっくり歩いています。

「あの〜…
どこに向かって歩いているんですか?」

すると婆ちゃんは。

「ただ、歩いているだけさね……。」

と応えます。

意味がわかりません。
(知りたきゃついといでって、言われたからついてきたのに。
どこか目的地があるからこうして歩いているんじゃなかったのか。?。)
と、僕はこの婆ちゃんにどこかへ連れていって貰えるとばかり思っていたんです。
横目でチロッと睨みつけながら、婆ちゃんはただテクテク歩き続けます。



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