水溜まりに手をふる男(第7章)

ポロンチョ牡丹  2007-12-10投稿
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僕は聞くのを諦め、何もわからないまま歩き続けます。

すると、婆ちゃんはまたもや横から顔を覗き込み。
僕の眉間にシワのよった困った表情を見て、してやったりとニヤリと笑みをこぼすのです。

ハッとその薄ら笑みの理由に気づき、(してやられたぁ〜…。。)

と思い出したんです。

知りたきゃついといで、そして何も言わずにただ歩いていく婆ちゃんに、僕はただついてきてしまっただけ…???
誰もどこへ、何をしに行くとも言ってはいないわけです。

してやられた自分の気持ちとは裏腹に。

色とりどりの光を放つ霧達は、渦を巻いたり、ふっと消えたり出てきたり。

ゆらゆら舞を舞っているようでした。

嬉しそうにほくそ笑む婆ちゃんは、急に立ち止まって…指先をほいっと上に向け。

「ほら…。」

と、僕もその指につられて上を見上げました。

何もない空に…、人がスッポリ入るくらいの窓のようなものがあります…。

あの時の水溜まりです。

水溜まりの向こうには、丁度婆ちゃんに呼び止められ、硬直したまま視線を下に向けた時の僕の姿がありました。

どうゆうわけか、見慣れた道から霧の中を歩き続けている内に…、いつの間にやら水溜まりの中を歩いていたらしいのです。

そして見上げた水溜まりの向こう側には、あの時の自分の姿が見えている…。

(あれは、確かに僕で…、。?…で、今ここにいるのも僕…。??。)

婆ちゃんは、またもやしてやったりと、息を吸うようにして笑い、今度は下を指差しました。

指先の下には…、また自分の姿が。その下にもそのまた下にも僕がいます。



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