奈央と出会えたから?

麻呂  2007-12-10投稿
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『正常に作動してるだと?何言ってんだてめぇ。正常に作動してたら、どうして出ないのよ。ははぁ‥さては裏ロム使ってるな?お前もグルか?』
初老の男が何やら絡んでいるらしい。
ま、パチンコ屋ではよく見る光景だよな。パチもスロも結局は店側が儲かる様になってんだから(例外の凄腕パチプロもいるが)、熱くなっても無駄無駄ーー。とは言えども、俺も昔はこの男の様に、スロに金注ぎ込んでいた事もあったっけ。それでもあの頃の俺は“熱くなる”と言う気持ちを感じていた。近頃の俺は“熱くなる”どころか、どんどん“冷めている”様な気がする。何故か高ぶる感情が湧いてこない。
まるで惰性で生きている様なものだ。
惰性で生きていて意味があるのか?
俺は一体なんなんだ。生きているのか、死んでいるのかーーまるで廃人同然だ。毎日がその日暮らしで、財布には2万5千円。早く次のバイトを見つけなければ‥‥。
一体いつまでこの生活が続くのか‥。
一体いつからこの生活を続けているのか‥。
そんな事を自問自答している自分に没頭していた。

『ふざけんなよ、このブス!!てめぇじゃ話にならねぇ。上司連れてこい!!上司!!』

さっきの初老の男の怒鳴り声が聞こえて、俺はふっと我に返った。幸い今日のこの店は、何かのイベントらしく、客が割と入っていた。周囲の雑踏と店内の有線の音で男の声は、かき消され、この怒鳴り声に気付いた者は、あまり居なかった。あ〜あ、気の毒に‥。客商売も楽じゃないねぇ‥。俺は半ば冷めた目でその光景を見ていた。
生憎、パチもスロも、する金がないので、このイベント時に打つ事が出来ず、俺は時間を持て余していたから、この初老の男と女店員のやりとりを興味深く観察していた。

『どうした?早く上司呼んで来いよ。』だんだん女店員は泣きそうになっていた。この女店員の今にも泣き出しそうな顔を見ていて、俺は何故か急に胸が苦しくなった。自分でもよく分からないが、久々に込み上げて来た感情(?!)とでも言うのだろうかーー。

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