丁度あれは…二千と五百年前の今頃…、
1人の僧侶がわしの根本に腰をかけ。
悟りをひらいた…。
若い僧侶じゃった…。
彼はわしにこう告げた。「二千と五百年後の今日、迎えにきます。」と…。
あの頃に比べて、今わしのいる世界は、あまり住み心地がよくない。
空は騒がしくなり…、
空気も臭くなってしまった…。
水や大地や風の精霊達も力を弱め始めている。
わしは樹じゃ。
この地に根づいて六千と五百になる。
わしの子供達はほとんどが枯れはて…。
散らばった子種達は、芽がでる前に死んでいった。
…そろそろ迎えがくる頃じゃ……。
わしは新しい始まりを求めて、この地球を離れる事にした。
わしの祖先が暮らす星へ、きっと子供達も着く頃だろう…。
その日、落雷が落ちた。樹齢およそ六千と五百歳。
樹は、たちまちに燃えあがり、跡には焼け焦げた大きな残骸が、土に還ろうとしていた。
燃えつきた残骸はきれいに片付けられ、その上に道路がしかれた…。。
いく年か過ぎた頃、その地にいたはずの
鳥や獣達の姿はどこかに消えてしまったという…。