ある所に悪魔がいました。
その悪魔は生まれついての本物の悪魔です。
悪魔が生まれた時、あまりの醜さにショックでお母さんは死にました。
産声の醜さで、病室にいた人達は発狂して死にました。
その吐く息は毒の息で、なんとか育てようとしたお父さんもやがて中毒で死にました。
悪魔はいつもひとりです。
誰もが悪魔のことを悪魔だと知っているからです。知らない人もその姿の醜さですぐ悪魔だと気付きます。
誰も悪魔に近付きません。悪魔があまりにも醜い姿をしてるから。
誰も悪魔に近付きません。その吐く息は毒の息だから。
誰も悪魔に近付きません。悪魔がくしゃみをしても咳をしても、どこかで誰かが死んでしまうから。
誰も悪魔に近付きません。でも、悪魔は寂しくて泣きます。
ひとりぼっちは寂しいと泣きます。
その泣き声によってどこかで誰かが死んでしまっても、寂しい寂しいと泣くのです。
それでも人々は悪魔に近付くことはありません。その泣き声を聞いたひとはみんな死んでしまったからです。
悪魔は寂しくて泣きます。悪魔は自分のせいでひとが死んでしまうことが悲しくて泣きます。
どんどんどんどんひとが死んでいきます。
悪魔は寂しくて泣きます。悪魔は悲しくて泣きます。
どんどんどんどん死んでいきます。
悪魔は寂しくて泣きます。悪魔は悲しくて泣きます。
やがて悪魔は本当のひとりぼっちになってしまいました。
ちょうど同じ頃、悪魔も泣いて泣いて、泣き疲れて死んでしまいました。