翼は疲れた身体を暖かい布団で包み眠りについた。
彼女が今の眠りにつけるのようになるまでには長い長い時間が必要だった。
まだ幼かった彼女はいつも恐怖の中で泣いていた。
彼女自身、幼かったが為にその理由はわからず両親にも理解出来なかったのだろう。
でも彼女には見えていた者があった。
それを上手く伝える事が出来ず独り怯えていた。
いつも決まって寝る前に天井の右角に何かがある
それが何かはわからない。
幼い翼は母親に必死で泣きながら『何かが居る』と訴えが母親は泣き叫ぶ子の声に怒る父親の事が気になった。
決まって翼を背負い外に出た。
翼の両親はそんなに仲が良いわけではなかった。
そんな両親のケンカが始まると翼の小さな心は恐怖で破裂しそうだった。
母は泣き血を流していた
そして両親は離婚した。
翼の家庭は母子家庭となった。
母親は父親の残した借金を帰すために働いた。
人一倍働いたのだろう。
翼はそんな母親を見ながら育って行った。
いつの間にか翼は『何か居る』と言わなくなっていた。
大人になり彼女と話をするまでは、そのことすら忘れていた。
しかし、次第に自殺願望へと変わって行ったのだ。
今の時代、小・中学生のメンタルケアや欝を多くのメディアは取り上げるが、
翼が小学生の頃には大人達がそんな事を考える事はなかった。 まして小学生が自殺なんて考えるとは思わなかったねだろう。
でも翼は眠りにつくために布団に入ると死にたいと願った。
その願望は大人へと成長しても心からは消えなかった。