『あんたと同じで、信じるか信じないかはあんたの自由だ』
『わかっている』
『ここは、あんたの知ってる所とはちょっと違う』
『だろうな』
『今、この国の天下を握ってるのは、武田慎玄って化け物だ』
歳三は片方の眉を上げた。想像すらしなかった名前だった。
正宗は続けた。
『慎玄の野郎は京都に居城を構えて、朝廷も滅ぼした。』
『朝廷も!?』
『ああ、所詮、飾り物だからな。大したことじゃない』
『それで?』
『慎玄にはほとんどの武将が下った。織田伸長、豊臣秀佳、徳川家安、明智充秀、真田雪村なんかだな』
『ほう』
そうそうたる面子ではないか。慎玄とはそれほどの男なのか。歳三は思った。
『全員が下った訳ではあるまい』
『そうだ。少なくとも、越後の上杉謙心、加賀の前田寿家、そして奥州伊達正宗だ』
『妙だな』
歳三はきりかえした。
『北条はどうなっている?かなりの勢力のはずだが?』
『まあ、話を急ぐなよ。これからが本番だ』
正宗は身を乗り出した。