言うつもりじゃなかった。ずっとバッテリーを組んでいた親友のせいで夢を諦めたなんて思いたくもなかった。
なのに何故こんなにも言葉が止まらないのだろう。田上が憎い。今まで抑えてきた感情が一気に吹き出していくのがわかった。
「お前なんか友達じゃない!」
「俺だってお前なんか……!」
強く握りしめた拳で田上の頬を殴ろうと右手を振り上げた。
「止めろ」
その腕を夢路に止められ悠斗は我に返った。
「……来るぞ」
今まで見てきた夢とは違う異質な何かが近づいていた。地響きを上げ水面は更に揺れ動き水位を上げている。
その直後前方から大きな物体が跳ね上がり、悠斗の頭上を飛び越え水しぶきをあげて水面に潜り込んだ。
「イルカ……?」
水族館にいるイルカとは違い、真っ赤に染まった皮膚をしている生物。けれど形はイルカそのものだった。
「あいつは紅啄木鳥……お前の夢の住人だ」
「キツツキ?どう見てもイルカにしか……っ!」
太股に痛みを感じ、悠斗は痛む箇所を手で押さえた。そのすぐ横には先程と同じイルカが水面から目だけを出しじっと悠斗を見ていた。
「ちょ、夢路さん!あいつら一体……」
「お前俺の忠告覚えてるか?」
三人を取り囲み廻り続ける三体のイルカ。身構えながらその動向を目で追ってある。
「早く思い出せ」
その瞬間一匹のイルカが跳ね上がり、宙に浮いていたピエロの一体を飲み込んだ。
「っ!」
続けて他の二匹もピエロを飲み込み続け、逃げまどうピエロの数は次第に減っていった。
「共食いが始まったぞ」
「と、共食いって……」
「夢の住人は一つで充分だ。余計な邪魔をされないよう早めに潰しておくのが得策なんだろうよ」
そうは言っても異様な光景に、悠斗は口元を押さえ嘔吐した。中には飲みきれず緑色の液体を体から出しているピエロもいた。