「…あの部屋か…。」
急に平田は遠い目をした。本当にいきなりだったからゆかりはちょっと驚いた。「どしたよ、平田。」
「…うん、なんか悪夢がよみがえってきてさ…。」
彼は過去二度ほど、変人部屋(スプーキールーム)に足を踏み入れたことがありそのたびに泣きそうな顔で「二度といくもんか!」と叫んでいた。
何があった平田。
自分は足の踏み場を探すことと変な品物を見たくらいだったのだが、彼は予想外の出来事に出会ってしまったようだというのは解る。「おーい、誠ー?」
人の思考を遮る声が背後からした。
「おーう?」
平田が振り向くと、いつも平田とつるんでいる亀崎智が、派手な毛皮のコートを脱ぎながら近づいてきた。彼のうちは有名な資産家だ「さっき変人に廊下であってさー、『間宮氏と平田氏に、あとで研究室に来てください。』って伝えておけっていわれた。ちゃんと伝えたからな。…つか、まこおまえ何したんだよ?」 「なにもしてねーよ。」