ロジック 第1部 ?

KOH.  2006-04-02投稿
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 『……………』

 バスの車窓を流れる景色は、なんだか不思議と頭に残る時がある。ガラスの向こうにある、何気ない日常。俺はそれをじっと眺めていた。

 『……………』

 何も言葉は浮かんでこない。音も奏ではしない。ただ、無意識に、映像を受け取るだけ。実際、思考や意識は全く別のところにある。

 『…待っててな、マキ……』

 俺は、今、マキのところへ向かっている。

 車窓の外に、ブサイクな男とそれに不釣り合いな美人が手を繋いで歩く映像が、流れていった。が、気にもとめなかった。

   * * *

 『澤谷遥臣(サワヤ ハルオミ)君、ですね?』

 鳥のさえずりが響くだけの薄暗い雑木林で、花束を手にした警察官の女が俺に尋ねる。まだ若い、割と綺麗な人だ。

 『そうですけど?』

 『私は、県警の大澄真紀(オオスミ マキ)といいます』

 『…マキ……?』

 この人も「マキ」なのか。おそらく俺の顔にはそう書いてあったろう。マキさんは花を供えながら言った。

 『…私、藤間麻紀(フジマ マキ)の従姉妹なんです。マキが殺された時、私は何も出来なかった。警官なのに…それが悔しくて』

 『……………』

 俺は言葉に詰まって、何も言えなくなっていた。1年前、この場所で、マキは何者かに…殺された。かなり暴行も受けたようだった。服はズタズタ、顔には涙の筋が残っていた。

 …俺は、未だ見つからぬ犯人に、明確な殺意を抱いていた。



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