彼は同じ学年の『谷澤 圭悟(たにさわ けいご)』くんだ。
ルックスが良くて、運動神経も良い。
性格は良く言えば、明るくて、社交的。
けれど、素行は良いとは言えなくて、悪い友達も多いし、女性関係で何度かトラブルを起こしていた。
また、サッカー部に入っていて、
キャプテンの杉(すぎ)くんに及ばないけれど、サッカー部でも一目置かれている存在だ。
女性関係で問題があってもルックスやスタイルは良いし、経験で磨かれた女性を扱う手練手管は女性を惹(ひ)き付けた。
もちろん、私は松田くん一筋で、彼に惹かれたことはない。
むしろ、彼の女性を見る目が、
何か別ものを見ているようですごく嫌なものを感じた。
根拠は何もないけれど、生理的、本能的に鳥肌が立った。
彼が声をかけてきたのは、松田くんのことを考えて気分が沈んでる時だった。
「放課後、図書室で待ってる。」
彼はそれだけ言うと行ってしまった。
別に彼の言葉どおりに行く義理も理由もなかった。
ただ、
あえて無視するのも感じが悪いし、松田くんを待つついでに用件を聞けば良いかとも思った。
それが、彼のワナだった。