「だって私も最初、江森君だっけ…を見て綺麗な人で羨ましいなって思ったもん」
クスクス笑いながら希さんが言う。
普通なら怒ったり、するんだろうけど…正直嬉しかった。僕と同じ感覚を持った人と会うのは初めてだったから。いつも、一方的に女の子に『綺麗』『可愛い』とか言われるのが嫌だった…。
なのに希さんに言われると、照れる!
僕は男なのにっ。
「あの…ありがとうございますっ!あ!え…とありがとうございますは、おかしいですよね…あれ?」
思考がこんがらがる。
「で…本題は何か聞いて良いかな?」
希さんが言う。
「えっと…もし良ければ、お友達になってくれませんか?」
うわぁ…我ながらダサい。
希さんは、ぽかんとしている。そりゃそうだろうなぁ…。
もう駄目だー絶対に呆れられたぁ。
「はい」
…え?
「喜んで。本好きの友達欲しかったんだ」
今のは聞き間違え?
「あの…本当に良いんですか?僕なんかで」すると希さんは、悲しそうな顔になって…
「自分の事『なんか』なんて言ったら駄目だよ」
「す…すいません」
つい、謝ってしまう。「あ〜…江森君が謝る事無いよ。私こそ偉そうな事言って、ごめんなさい」
何だか嬉しかった。
「あ!!」
希さんが何かを思い出したように、僕の横を通り本屋の方に。
どうしたんだろう?やっぱり何か、気に触ったのかな?
「ごめんね!ちょっと入り口に忘れ物しちゃって」
希さんの手には黒い傘が握られていた。
雨も降って無いし、今日はそんな予定は無かった筈だ。
「日傘なんだ」
日傘?もう寒い時期なのに?
「ちょっと日光や光にアレルギーと過敏性なんだ」
又、悲しそうな顔になった。
「あ…この時期だと、もう寒いですよね」
今度は驚いた顔になる。何か悪い事言ったかな?
「っと・ごめんなさい。いつも『大変でしょう』とか『可哀想』とかしか言われなくて、ちょっと驚いちゃった。江森君て本当に優しいんだね」
希さんの目が少しうるんでいる。
真っ黒な瞳が揺れて凄く綺麗だと思った。