黒鶴は紅鶴が不安になっていることに気が付かないでいた…黒鶴が舞えるのは紅鶴の瞳の中でしかないのに…
今思うと、ヒデってかなり良い奴だったと思う。それとも片山さんが取られないって自信があったのか。分からないけど、何にせよ良い奴だ。このヒデのお陰で僕達は付き合うことになる。とは言っても、まだずっと先の話しだ。とりあえずヒデが僕達のキューピッドってことには変わりない。
その日の夜、僕は片山さんにメールを送った。20分後に返ってきた。今でも鮮明に覚えてる。初めて返ってきた時の喜びは忘れない。たぶんあの一瞬、世界で一番幸せな奴になってたと思う。他愛もないメールを何通か繰り返して、片山さんはお洒落な人が好きだってことが分かった。『裏原系のカッコする人が好き』って聞いて、初めてお洒落雑誌を買った確かSMARTだったと思う。でも裏原系のカッコを知れば知るほど僕には出来ないカッコだって分かった。だって、その頃の裏原系といえば男がタイツを履いて、その上にデニムのショーツを履く、お洒落入門者にはとてもじゃないけどハードルが高かった。でも、ロボット、アニメ、フィギュア…Etcなんかが好きな120?オタクだった僕が、変わるための一歩を踏み出せたのは彼女のお陰だ。15歳から、20歳を迎えた今年に至るまで彼女は常に僕を変え続けてくれた。