「話したくない?」
酔っぱらいはしつこく聞いてきた。
「…」
プツン。
電話を無言で切った。
そのあと何度か電話は叫んでいたが、枕の下にしまいこみ、布団に潜り込み眠った。
朝、確認すると、メールが一件。
『ごめんなさい』
たつやからだった。
意地悪な気持ちがムクムク膨れ上がる。
たぶん、男を弄ぶ悪女というのは、こんなものだろうか?
その日、たつやから何通もメールがきたが、そのすべてを無視した。
とおるからのメールには、すべて返信をしていたから、メールが面倒とかはなかったはずだ。
夜、たつやからのメールがきた。
『ごめんなさい、怒ってるのはわからるけど、何か言って。このメールに返事ないと、もう生きていけない。』
驚いた。私が結婚しているのをわかっていながら、彼は私を本気で想っている。
うれしさと、小さな恐怖が、私のなかに生まれた。
そして、
「わかった。もうしないでね」
とメールを返した。