『一月程前に大きな戦があってな』
『ほう。』
『上杉、前田、北条の連合軍が、慎玄が上洛した後の甲斐の国を治めている真田雪村に合戦を挑んだ。』
『真田雪村とはそれほどの相手なのか?』
『ああ、化け物だぜ。残念だか奴に勝てるのはいまんとこ慎玄くらいのもんだ』
『ふん。』
歳三は何故か体中の血がたぎるのを感じた。
そう言う男なのだ。相手が強く、大きい程喧嘩のしがいがある。そう思う男である。
歳三は疑問を口にした。
『何故お前は加わらなかった?』
正宗は鼻で笑った。
『へっ。解り切った事聞きやがる。あんた程の男がこんな好機に気がつかねえ訳ねえだろ』
『背後の憂いを断つ。か。』
正宗は嬉しそうに目を細めた。
『やはりな。正解だぜ。雪村に関心が行っている間、俺様はなんの心配もなく奥州より北を押さえる事が出来る。そうすりゃあ何の心配もなく慎玄退治に打ち込めるからな。それに、もしかしたら連合軍が雪村を討ってくれるかもしれねえし。』
『悪い奴だな。』
『よく言うぜ、あんたでも同じ事したはずだぜ。』
『当然だ。』
歳三は苦笑いした。
『話を戻すぜ。連合軍の策は、前田、北条の両軍が背後に回って雪村の補給路を断ち、上杉が正面からぶつかる。ってやつだった。あんた、どう思う?』
正宗は歳三に尋ねた。
『愚かだな』
歳三は即答した。
『ほう。何故だ?』
『確かに見た目上、雪村を孤立させた様に見えるが、前田と北条は、背後の徳川や明智から攻め込まれる可能性を考えて無い。そうなった場合、雪村は迷わず前田と北条を先に叩くだろう。前田と北条は挟撃され、壊滅する。その後で上杉を討てばいい。簡単な事だ。』
『解りが早くて嬉しいぜ。』
正宗は笑った。