黒鶴は、紅鶴のことが好きで好きでたまらなかった…
その日、僕は家に帰ると母親は家を留守にしていた。ただ、一人でいることがツラくて堪らなくて、何を血迷ったのか、僕は家出をした。目的も分からず、歩き続けて、気が付くと、隣の街まで来ていて、次の日の朝になっていた。通りすがりの人に一番近い、駅を聞いて、そこで親に電話して、迎えにきて貰った。僕はこの日から一週間学校を休んだ。休みの間に母親は僕をばあちゃんの家に連れて行ってくれた。
ばあちゃんは、ことの経緯を全部母親から聞いていたみたいで、黙って、僕の好きなイチヂクとお茶を準備しておいてくれた。
「女の子にフラレるの初めてかい?ツラいだろぅ?でもね、本当に好きなら、好きで居続けるんだよ。いつか思いは通じるから。」
僕はまた、泣いた。あり得ないくらい涙が出た。止まらなかった。帰りは、合流してきた父親の車に乗って帰った。父は寡黙だが、僕にアドバイスをくれた。
「メチャメチャ好きだったんだろうけどな、メチャメチャ好きになる前に告白ってのはするんだよ。あっ好きかもくらいの時にな…それが自分が恋愛で傷つかない極意だ…でも理屈抜きで好きになっちゃう時ってあるんだよな…いちよ参考にしとけよ。」
初めて父から優しくしてもらった気がした。