余程傷心のご様子で、その少女は泣いて居られました。
それも深夜の二時過ぎ、都会の町の中央に位置する道路のど真ん中です。
季節は真夏なのにも関わらず、その少女は季節外れな分厚いコートを着用し、首にはマフラーが何重にも巻かれてありました。
それだけでも十分目立つでしょうに、彼女は不可思議な事に道路の真ん中にうずくまって泣いているのでした。
彼女を見かけた町行く人々の中には、余程良い人ぶりたいのか、偽善者の代表とも言えるヒーロー気取りな足取りで彼女に近付き声を掛ける者もありました。
『どうしたの?』
そう尋ねられた少女は悲しそうに、涙の溜まった瞳を向けながら必ずこう答えるのでした。
『いつまでたっても車が私をひいてくれないの。去年の冬からずっと此処で待ちわびているのに。』
彼女は自殺志願者だったようです。