「150円、315円…全部で3682円になります。」
いい年をして19時になってもスーパーのバイト。周りの店員はゆうに一回りは歳上のおばさまばかり。たぶん私はこのスーパーの店員の中で最年少だと思う。だけど決して私に恋のチャンスは来ない。
だって私はブスだから
21時を過ぎるとやっと私の時間になる。高校を卒業してこの4年、朝から今までこれが私のライフスタイルだった。高校は有名な商業高校だったけど、人見知りが激しく容姿のお粗末な私はろくな職場につけずスーパーのバイトをしているのです。何かとこの容姿には苦労している。学生時代は散々いじめられて友達が出来ず、産まれてこのかた彼氏も出来たことがない。今だって職場のオバサン達に「暗くて地味な子」として仲良くなれないでいる。
スーパーから家まで歩いて15分、私は毎日自分の容姿の不幸について考えていた。
だけど今日は違った。
ドガッ!
「きゃぁあ〜!?」
いきなり後ろから何かがブツかってきた。あまりの衝撃に私は思わず尻餅をついて倒れた。
「いっててテテ…」
おしりを擦りながら目の前を見ると男の人が月明かりに照らされながら倒れていた。
私はぶつかられたことも忘れて男の人の側に寄って
「大丈夫ですか?大丈夫ですか?」
と恐々と尋ねた。
するとなんとその男の人はいきなり「ウブッ…」と変な声をあげるとゲロを吐き始めた。
その異臭に私は口元を押さえてむせ返りその場から逃げようと立ち上がったのだけれど、その男の人があまりにも苦しそうにしているものだから可哀想で見てられなく、おんぶして家まで連れて行きました。
「あ、目覚ましましたか?」
「…」
家に連れ帰って1時間後に男の人は目を覚ましました。
すると男の人は辺りをキョロキョロし私を見るなり泣き出したんです。
私は産まれてこのかた彼氏も出来たことがなければ顔を見られて泣かれることもなかったのでショックをうけました。でもまぁ一応彼に質問はしました。
「どうしたんですか?」
これで本当にブスだからと言われたらたまらないなと思いながら。だけど
「ありがとうございます!こんな僕に優しくありがとうございます!!本当に…」
産まれて初めての心のこもった『ありがとう』に私は自分でも知らないうちに涙していた。
私はこの時彼に不思議な波長(?)を感じたのだった…